報告:EAIE2011・第23回EAIE年次大会:JAFSAセッション
日時:2011年9月16日(金)14:30-16:00(現地時間)
場所:コペンハーゲン Bella Center
発表者:芦沢真五(明治大学)、太田浩(一橋大学)
Darla K. Deardorff (AIEA, Duke University)、Adinda van Gaalen (Nuffic)、
発表タイトル:Quality Assurance and Internationalization Review Process; Europe,
US and Japan
参加人数:60名
本セッションでは、まずチェア(芦沢)より、この合同セッションの背景説明をおこなった。世界規模で大学間競合、連携が進む中で、アカウンタビリティーと質保証の概念及びその実践がますます重視されている。国際化に関する組織(機関)評価は、国や地域によって取り組みやステークホルダーが異なるが、評価手法や指標の違いを比較検証することにより、共通の課題、普遍的な評価の価値、あるべき姿が明確になると考えられる。
発表チーム
最初のスピーカーであるDarla K. Deardorff氏(Executive Director /AIEA)からは、米国における国際化の評価の現状について報告があった。連邦政府の関与が希薄な米国においては、認証(アクレディテーション)機関による大学国際化の評価、あるいはAmerican Council on Education (ACE)などのような第三者機関による組織(機関)評価プログラムなどが主流である。こうした組織評価に対して、国際教育プログラムについての評価は、Forum on Education Abroadなどの専門家組織によって、学生の学習成果分析(Learning Outcome Assessment)として進展している。国際化の組織(機関)評価と国際教育プログラムの学習成果分析は相互に影響し合っており、質保証の概念を重視して多面評価型のシステムを取り入れるなど、評価の手法も多様化している。
次に欧州における国際化評価の現状につき、オランダの政府系独立機関で国際関係の質保証も担っているNuffic(オランダ高等教育国際協力機構)の上級政策担当官であるAdinda van Gaalen氏から報告がおこなわれた。欧州においては、90年代からすでにInternationalization Quality Review (IQR)などの評価手法が開発されてきたが、近年はベンチマークによる評価、オンライン評価プログラム、などが開発され、目的に応じて評価手法は多様化している。まず、オランダの大学のために開発されたMapping INTernationalisation (MINT)ついて説明がおこなわれた。MINTは、大学が国際化に向けた自己評価分析をするためのオンライン・ツールであり、競争的資金の審査など他の目的では利用されていない。欧州ではこのほか、EUを中心にACA, Nuffic, CampusFranceなど6つの機関の連携の下、ドイツのCHEがコアとなって国際化評価のための指標開発を行っているIndicators for Mapping & Profiling Internationalisation (IMPI)というプロジェクトがあり、300にも上る評価指標をオンライン上で公開している。このプロジェクトに参加した大学は、自大学の特性、国際化評価の範囲、目的などに応じて必要な指標を選んで活用し、定期的なベンチマーキングの会合を通して、より有効な指標を開発していくという仕組みになっている。
日本においては、2006年に大阪大学の科研チームによる評価チェックリストが策定された経緯があるが、まだ汎用的に利用しうる国際化評価プログラムは開発されていない。太田浩氏(一橋大学)は、2009年に実施した「大学国際戦略本部強化事業」における質問紙調査とインタビュー調査から、日本の大学の国際化評価(機関評価)の現状と課題について報告するとともに、国際教育プログラムにおける評価の動向と問題点についても指摘した。形式的な自己評価や“やらされ感”のある評価活動から脱却し、効果的な国際化の評価手法を採用することにより、国際化が大学の中心的課題であることが、きちんと認識されるようになると共に、国際化の取り組みも場当たり的、付加的なものから、大学のコアコンピタンスをベースに置き、優先順位を明確にした戦略性の高いものへシフトするであろうと述べた。そして、このシフトが大学全体を変革する真の国際化につながるとして発表を終えた。2011年度から開始された科研プロジェクト(代表者は太田氏)においても、新たなオンライン評価ツールの開発を目指している。
演壇: 芦沢氏
太田氏
今回のセッションを通じて、国際化評価の手法開発にかかわる各国の関係者がネットワークを維持していくことの重要性を再認識した。国際化評価にかかわる各国や地域の文脈の違いと共通点を認識することにより、評価手法が有意義なものに発展すると考えられる。
本セッションの実現にあたり、JAFSAからの全面的なサポートをいただいた。あらためて関係者に感謝の意を表したい。なお、セッションに先立ち、東日本大震災および原発による被災に対する世界各地からの支援に感謝するため、JAFSAならびに東日本の大学を代表しての末松和子氏(東北大学)から報告と謝辞が表明された。
報告者:芦沢 真五(明治大学)
発表資料(PDF)はこちらからご覧いただけます。


