過去の実施報告

報告:多文化間メンタルヘルス研究会「大学生の自殺危機への対応」(2014年3月15日、京都)

JAFSA多文化間メンタルヘルス研究会 実施報告
テーマ「大学生の自殺危機への対応」



実施概要


日 時: 2014年3月15日(土)14:00-17:00
会 場: 京都大学国際交流センター国際交流多目的ホール
講 師: 太刀川 弘和氏(筑波大学保健管理センター講師)
     医学医療系臨床医学域精神医学
参加者: 22名


実施報告


報告者:大西 晶子(東京大学)

 「自殺危機への対応」というメインテーマのもと、主に青年期の自殺の傾向や対応にあたっての留意点について筑波大学保健管理センター精神科の太刀川(たちかわ)弘和氏をお迎えし、ご講演いただいた。引き続き、二大学の会員の方から、自殺念慮・企図、未遂、既遂の事例報告が行われた。さらに、北海道から九州まで、全国から集まった殆どの参加者からも事例紹介などがあり、活発な議論・検討が行われた。


熱心に耳を傾ける参加者

太刀川氏講演の様子


講演では、「うつの好発期・アイデンティティの危機・他者からの被影響性や衝動性の高さ・対人関係の問題を抱えやすい時期」といった青年期の特徴から、自殺との親和性の高い集団を抱えていることを前提に、常日頃から予防対策を講じておくことが大学にとって不可欠であることが示唆された。そして、筑波大学におけるスクリーニング等に力を入れた取組が紹介された。
また、リスクの高い大学生の一般的特徴として、「自宅からの通学者ではないこと、修学・進路の悩み、休学歴やひきこもりの状態、それに伴う学内での孤立」が挙げられ、「学生を孤立させないことが予防につながること」が示された。見落としがちなことであるが、「ひきこもりや休学・留年のみならず、復学の際のケアなど、孤立した学生を再び大学に戻していく支援も自殺予防において重要である」と述べられた。加えて、自殺は周囲に及ぼす影響が大きく、不幸にもそうした事象が生じた後には、大学コミュニティにおいて迅速な対応が求められること等、ポストベンションの重要性も指摘がなされた。
予防的対策においては、「地域性や各大学の特有の課題など、自殺の生じる背景を理解することが重要である」と述べられた。つまりは、対応の基本を押さえながらも、それぞれの大学のニーズに沿った対策を練ることが必要であるということになろう。
また、「リスクが高いと思われる学生に対して、援助者個人として何ができるか」という問いに対しては、「問題を『解決する』ことを目指すのではなく、『つながる』ことを目的とした働きかけを行うこと、学生と他者とのつながりを多重化させ複数で見守る連携体制を構築することが重要である」と強調された。これらは留学生に限ったことではないが、『孤立』の状況が、日本人学生以上に生まれやすい留学生対応において鍵となる考え方であると感じた。加えて、留学生に特有の問題としては、母国との連絡や言語対応、入院時の同意、文化的特徴を踏まえた対応の重要性なども指摘された。
会場からは、医療機関へのつなぎ方や、学生に必要な治療を継続させるための工夫、危機対応に係る費用、言語対応上の問題など、非常に具体的な質問があがり、担当者が実践の場で対応に苦慮し、思考錯誤しておられることが伝わってきた。
留学生は、様々な事務的手続き等を通じて、大学として、生活状況が把握しやすい集団であるともいえ、リスクの高い留学生の存在を最初に把握するのが、こうした手続き関連の支援を行う留学生担当部署であることも少なくないと思われる。ゲートキーパー的役割を担うことにより、問題を早期に発見できる可能性があるが、一方、留学生担当者が、危機的場面への対応の責任を一手に引き受けざるを得ない場合も少なくないだろう。また、「あの時の対応は、あれでよかったのだろうか」という戸惑いを共有したり、疑問を解消する機会がないままになりがちでもある。そうした意味でも、守秘義務に守られた中で、関係者が知恵を持ち寄る機会や、専門家から助言を得る、今回の研修のような場は大変重要であろう。
最後となったが、太刀川先生、並びに貴重な学びと情報共有の場を提供してくださった、大橋氏はじめ事務局の皆様に感謝を申し上げたい。



★多文化間メンタルヘルス研究会については、こちら をご覧ください。
※本研究会に関心のある方は大橋敏子氏まで直接ご連絡ください。




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