実施報告

報告:多文化間メンタルヘルス研究会「精神医療における医療通訳」(2015年3月21日、京都)

JAFSA多文化間メンタルヘルス研究会 実施報告
テーマ「精神医療における医療通訳」



実施概要


日 時: 2015年3月21日(土)14:00-17:00
会 場: 京都大学国際交流センター国際交流多目的ホール
講 師: 阿部 裕(明治学院大学心理学部教授)
   四谷ゆいクリニック院長
参加者: 20名(オブザーバー2名)


実施報告


報告者:高野 靖子(東京大学)

 「精神医療における医療通訳」というテーマで、四谷ゆいクリニック院長を兼務されている明治学院大学心理学部の阿部裕(あべ ゆう)教授をお迎えして開催された。代表の森純一教授(京都大学国際交流推進機構長)の挨拶の後、ご講演いただき、活発な質疑応答が行われた。その後、二大学の会員から、大学での留学生支援体制や医療通訳に関する事例の発表が行われた。大学からの参加者が多数を占め、各大学の現場が抱える多々の事例も紹介された。今回は、オブザーバーとして、医療通訳士や医療通訳派遣事業を実施している京都市国際交流協会の担当者の参加もあり、大変示唆に富んだアドバイスを聴くこともできた。


講演の様子

熱心に耳を傾ける参加者

質疑応答


講演は、(1)外国人をとりまく日本の現状、(2)多文化外来クリニックの現状、(3)外国人留学生のメンタルヘルス、(4)精神科医療における医療通訳の実際、という構成で約一時間行われた。
 阿部先生の診療経験によると、従来統合失調症と関連疾患、気分障害、不安障害等の神経性障害が多数を占めていたが、最近は、人格障害や広汎性発達障害が増加傾向にあること、また、初診外国人患者の来談経路は、医療機関からの紹介、ホームページ、知人友人、家族の順となっていると述べられた。
 医療通訳で注意すべき点として、挙げられたのは次の七点である。(1)相手の意図することを伝える、(2)何が問題なのかを整理してから伝える、(3)患者の話す内容が了解不能の場合、その旨を伝える、(4)感情移入しすぎない、(5)プライバシーに細心の注意を払う、(6)問題を自分一人で抱えない、(7)外国人支援ネットワークを活用する。
 阿部先生が強調されていたのが、自分一人で抱え込まないで同僚や仲間の助けを借り、外国人支援ネットワークを利用するという点である。その観点からも、多文化間メンタルヘルス研究会での”つながり”は大変ありがたく、意義がある。
 会場からは、「秘密を守る」と「一人で抱え込まない」を同時にうまくやるにはどうしたら良いのか、自覚症状のない患者を病院にうまく行かせるにはどうしたら良いのかなど、具体的な質問が寄せられた。それに対して、クリニックでの個人情報はもちろん秘密厳守であるが、同業者間の連携、対処法の相談は、一人で抱え込まない状況を保つことができる。自覚症状がない患者に対しては、心でなく身体に関連づけて診察を勧めると患者の抵抗感が少ないというアドバイスがあった。
 また、京都市医療通訳派遣事業が紹介され、医療通訳派遣にかかる費用と交通費を医療機関と行政が折半し、患者に負担がかからないシステムになっている。ただし、医療機関は通訳者にも医師賠償責任保険をかけることが義務づけられているとの報告があった。
 さらに、事例発表の質疑応答では、保護者を呼ぶ場合、その時期について精神科の専門家に判断をゆだねる。大学に予算措置をしてもらいたい場合、職員から教員に働きかけてもらうなど大変参考になる方法が紹介された。
 2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控え、今後ますます医療通訳の必要性は高まり、バイリンガル医療通訳者の養成は喫急の課題となっている。そういった視点からも、今回は時機を得た大変興味深い内容であった。
 最後に、阿部先生、並びに研究会を企画運営して下さった、大橋氏はじめ事務局の皆様に心から感謝申し上げたい。




★多文化間メンタルヘルス研究会については、こちら をご覧ください。
※本研究会に関心のある方は大橋敏子氏まで直接ご連絡ください。




チャレンジ25キャンペーンバナー画像
JAFSAはチャレンジ25キャンペーンに参加しています。