過去の実施報告

報告:多文化間メンタルヘルス研究会(2012年2月4日、京都)

JAFSA多文化間メンタルヘルス研究会開催報告
「大学生のひきこもりと発達障害への支援」


実施概要


日 時: 2012年2月4日(土)14:00-16:45
会 場: 京都大学国際交流センター国際交流多目的ホール
講 師: 上床 輝久氏(京都大学 健康科学センター神経科助教)
  大学院医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野(精神医学)
参加者: 27名



実施報告


報告者:岡村 光浩(神戸芸術工科大学)
「ひきこもり」の事例には多彩な精神障害が関与しており、中でも発達障害の関与はけっして稀ではないことも分かってきた。また、留学生のなかにも実は発達障害が疑われるケースもあり、ひきこもりと発達障害の理解のために多文化的視点から本研究会で検討を重ねてきた。ひきこもりと関わる際には、うつ病や統合失調症の症状としてのひきこもりかどうかの判断が重要になり、精神科医と連携して対応することが求められる。

そこで、本研究会代表である森純一教授(京都大学国際交流推進機構長、副理事)の挨拶の後、発達障害の専門家である精神科医の上床輝久 医師を講師として迎え、ご講演いただいた。講演の概要は以下のとおりである。

発達障害とは、自閉症(スペクトラム障害)アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものである。本人の学力に特に問題がない場合、コミュニケーション能力や多動性・衝動性をコントロールする能力、特定領域の学習能力に障害を抱えていても目立たぬまま大学入学の時期を迎えて、そこで初めて討論・論文執筆など自主性を求められる大学での学びに対する困難を覚え、また生活面においても自己管理を求められる場面が増えることから、近親者からは見過ごされていた社会性の低さが一気に表面化して、発達障害が明らかになることが多い。一般常識では「なぜそこまで」と思われるほどの丁寧な支援が必要になることも多く、直接の担当者だけでなく関係教職員の理解を得ることが重要である。

さらに、青年期の精神疾患(発達障害が基盤となっている二次障害や併存障害の場合もある)である適応障害、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、うつ病、境界性パーソナリティ障害に関する症状、鑑別の手がかり、治療についても解説された。そして、適応障害を初めとした神経症圏の精神疾患が多く、早期の医療機関への受診、薬物療法が重要である。また、幼少期から対人困難を抱える発達障害には、環境調整・構造化等の支援が効果的であり、心・体・脳の3要因をすべて考えた対応が必要であると述べられた。

いずれにしても、専門家も含めたチームで情報を共有し、一貫した対応で慎重に見守ることが肝要である。メンタルヘルス支援モデルは①事例の発生→②情報の収集と整理→③情報の共有→④具体的支援の4つのステップである。担当者が傾聴を心がけ収集した情報を家族や学内関係者・学外の支援機関で共有し、環境調整や学業上の配慮と共に、日常生活上の支援や医療機関等との連携を図っていくことが求められる。留学生の増加に伴う学生の多様化は、発達障害当事者支援への要請と相まって、高等教育機関としての大学が精神保健への責務を果たすことが求められている。

講演に続いて、発達障害の疑いのある留学生の事例を検討した。留意点として①肯定的に接しつつ、②図示など視覚面を活用し、③手順を細分化し、④成長を信じてサポートを続ける等、異文化コミュニケーションと発達障害支援は共通点が多いことが特筆できる。また信州大学学生支援GPにおける発達障害当事者支援および大阪府受託事業としてピアサポートを活用した発達障害当事者支援に取り組むNPO活動の紹介があり、フロアからもコメントや参加者それぞれの本務校での事例についての報告が寄せられ、活発な意見交換が行われた。


______________________________________________________________________________________________________________________________________________________

報告者:金子 稔(信州大学)
本研究会ではテーマとして一昨年にひきこもり、昨年は発達障害が取り上げられている。近年、我が国では両者とも留学生に限らず大学生のメンタルヘルスにおける大きな課題となっており、今年はその両者への支援がテーマとなった。

前半は、京都大学健康科学センター助教の上床輝久先生(精神科医)に「発達障害および精神疾患の理解と大学生のメンタルヘルス支援」と題してご講演頂いた。 自閉症(スペクトラム障害)や注意欠陥多動性障害、学習障害などの発達障害や、大学生でみられる適応障害、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、うつ病、境界性パーソナリティ障害といった精神疾患について、その特徴や治療、個々の問題に対する具体的な対応について分かりやすい説明があった。自閉症(スペクトラム障害)では大学生の場合、アスペルガー型が主で、言葉や知的な遅れはないが、自分と他人との関係について本来備わるべき言語的・非言語的コミュニケーション能力、対人社会関係能力、想像力などが備わっていない。大学入学後、親の庇護のもとを離れ生活の自己管理を求められ、今まで学力の高さによって見過ごされてきた社会性の低さが表面化する。適応障害では環境調整やコーピングスキルの獲得が必要となるが、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)、うつ病では薬物療法が必要であり、早期の医療機関への受診が重要となる。

対応困難例では、専門家・医療機関等と連携し、情報を共有しながら一貫した対応を目指すことが重要であること、メンタルヘルス支援モデルとして、情報を収集・整理・共有した上で、環境調整や学業上の配慮、日常生活上の支援などの具体的支援を行うという方針が示された。大学では今後、高等教育機関としての精神保健への責務も増大し、留学生増加による学生の多様化も見込まれる。正しい知識を共有し、協力、分担するとともに、支援を効果的に行うためにシステムの構築が望まれる。

後半は発達障害ないし精神疾患が疑われる留学生のひきこもり事例の検討が行われた。現場で実際に苦労されながらも、可能な範囲で環境調整や支援が行われていると思われる事例であった。発達障害については啓発が進み、より適切な対応がとれるようになってきているが、青年期にみられる精神疾患についても注意が必要であり、専門家との連携が重要であると指摘された。他大学で経験された事例や、大学全体で体制を組んで対応している報告などもあった。

前後半ともに、講演内容や事例に関しての質疑・意見交換も活発に行われ、参加者の関心が高いテーマであることがうかがわれた。


※本研究会に関心のある方は大橋敏子氏(京都大学)までご連絡ください。




チャレンジ25キャンペーンバナー画像
JAFSAはチャレンジ25キャンペーンに参加しています。